＝＝＝娯楽＝＝＝

話題の年を送る　　　水谷八重子

　　私は特殊児童でした

 

八重ちゃん（−とよぶのはいつまでも若々しいという意味だ）は毎日、芝居か映画を必ず一つずつは観ているという。大変な勉強なのである。そこで彼女の近ごろの勉強のユエンをききたいのがこちらのネライである。昨年は離婚問題。

　「エエ、そう、去年でしたわネ」

 

　その後菅原氏との“現代劇”が動き出したが、この線もプッツリ切れた。今年の彼女は、新派合同にも多すぎるくらいの役をもって活躍「姉の言葉」や「お蝶夫人」など従来の新派の世界とはちょっと毛色のかわった向でも評判を呼んだ。

 

「新派も古い形の芝居から、段々創作劇で境地を開き始めているでしょう。“息子の青春”“妻の青春”のようなホームドラマが生れたことは、私にとっても収穫でした。いままでは、新派だけの世界にとじこもっていて外部世界からは閉じられていたのですが、その点、私はたしかに特殊児童でした。最初はそういわれて口惜しかったけど、本当に社会との交流が必要になったのです」

 

　心のクサリを解いて初めて支持者のあることも信じられたと、舞台生活四十年になる彼女はしんみり語った。