＝＝＝＝モンゴメリイ・クリフトという俳優＝＝＝＝

浮沈の激しいハリウッドにあって最も期待されている若手のモンゴメリイ・クリフトは「地上より永遠に」「終着駅」ほかわずか七本の作品で押しも押されもしない戦後派二枚目の代表スターといわれるようになった、そこで彼が生い立ちと作品、その監督、相手女優を通して彼の横顔をうかがってみた

◇◇◇◇　一流監督でなら働く　◇◇◇◇

　　　二卵性双生児、１３で舞台に

○・・一九三〇年ネブラスカ州オマハ産で二卵性双生児という珍しい生れである十三歳の時、家はニューヨークに住みついたが、同じ年の冬休みにフロリダ州に旅行し、そこで地方劇に興味をおぼえて舞台に立って以来、老優トーマス・ミッチェルに師事し十年の後にはニューヨーク劇壇の中堅スターにおさまつた、そのころになつてハリウッドの触手が伸び、二十二回も映画出演にさそわれたが断り続けたというエピソードを持っている、しかしハワード・ホークス監督が遂に彼を攻略、一九四八年「赤い河」にデビューすることになつたが映画界入りの契約書には「絶対一流監督の下でなければ働かない」と宣言している、事実彼が出た映画監督は一流中の一流で「捜索」（未着）のフレッド・ジンネマン「赤い河」のハワード・ホークス「女相続人」のウイリアム・ワイラー「陽のあたる場所」のジョージ・スティブンスン「終着駅」のヴィットリオ・デ・シーカ「私は告白する」（未着）のアルフレッド・ヒチコック「地上より永遠に」のフレッド・ジンネマン、更に製作予定の「黄金の戦士」はエリア・カザンである

○・・そればかりではない、彼はシナリオを読み、これはと思うものでなければ決して出演しようとしない、それだけに彼はこれら一流の監督に彼の演技のありつたけを叩き出している、どの映画を見ても彼独得の伸び切らぬ姿勢、するどい眼光、それを際立てるに効果的な濃い眉毛――一度見たら忘れることの出来ない風ぼうの持主であり、重く沈んだ決して派手ではないが内面的に凝結したものを表現しようと苦心しているようだ、これがため彼は身軽に旅行し、あらゆる階級の人々の中に入って行きそれらの人たちとヒザを交えて話し合い、未知の世界を拓き、人生のありのままの姿を見極めようとつとめている

○・・相手女優にしても監督と同じで「女相続人」のオリヴァ・デ・ハヴィランド「陽のあたる場所」のエリザベス・テイラー「終着駅」のジェニファ・ジョーンズ「地上より永遠に」のドナ・リードとそろえて見事だ、彼はハリウッド在住のＵＰ記者の質問に答えて「悲劇的性格の人物を表現するのが一番適しているとよくいわれるが、私はいい物語であり、いい役柄で、いい監督であればどんな種類の映画にも出ます

＝＝＝＝踊る令嬢　　木村邦子さん＝＝＝＝

詩的な作品を表現　　アダジオのものに本領

邦子さんの先生は“舞踊家でまた詩人としても非凡の才能を持つ人”と永田竜雄氏はいうが、その作品にはおのずと詩的な裏付のあるものが数多い、そのため従来の創作バレエの観念で見るとチョットとまどう人もあるが、文学を理解する人にはこよなく楽しい作品である。邦子さんはそうした作品を舞台一ぱいに表現出来得る門下生中の一人である、去る七月産経会館での「うらしま幻想曲」中の「真珠貝」には今にも消えそうで消えぬパール独得の静かな情熱と気品を賛える好演であつた、アレグロより静かなアダジオものに本領を発揮する邦子さんは先輩岩本和子さんの後を継ぐ人、プール学院中学部の二年で英語の成績はいつも九十点より下は採ったことがないという（与世川彦志門下）