大劇場の一ヶ月公演を、文句なしに満員にしてみせる俳優は数少ない。その中の一人が杉良太郎。杉の場合、今年にひきつづいて来年も一月と七月の二回、新歌舞伎劇場に出演するのだから、その人気はすさまじいばかりだ。これをささえているのは中年の女性客。“おばさんたちのアイドル・杉”に女性観をきいてみたら――。

 

人気者ははとんど全部といっていいくらい��後援会″を持っている。たいがい会費制で、公演ごとに良い席を確保したり、スターを囲む集いに出席できたりというシステムだ。杉も以前は、このシステムをとっていたのだが、いまは“ファンクラブ”という名で無料だ。そんな会員が全国にざっと七千人。大阪だけで二千人いるそうだ。

　「会費をいただく後援会をやっていたころは、もめごとつづきだったんですよ。あの人とは話して、こっちとはしゃべってくれないだのっていうササイなことから、もめごとがふくれあがってきて、やりきれなくなってね。中には力（財力）のある人が一公演借り切ってやったからメシにつきあえなんてねえ。ぼく、いやなんだ、これ。一枚、一枚買ってくれる人の方が大切だし、会員の、“差”なんてあっちゃいけない。だから解散しちゃって、いまは無料の会。名前だけ登録してもらって、各地で集いを開いて、公演の時にはみてくださいってお願いする。こんな会員をもっともっとふやしたい」

　今年の七月公演では、ショーの間に客席へ降りて歌ったり、握手したりのサービスをくり返すうち、興奮した女性客に無茶な振る舞いまでされて彼得意のスキンシップはとうとう中止。“げにおそろしきは中年女”を味わった杉だが理想の女性像は大和撫子（やまとなでしこ）だそうだ。

　「女は男につくしてくれるものだと思うし、男も強いばっかりじゃなくて、やさしさを持つべきだと思っている。ぼくは戦争を知らない世代だが、戦前よくいわれた大和撫子って言葉が好きだなあ。いま、そういうやさしい女性ってこの地球上に鹿児島、熊本あたりとか、あとは台湾、韓国にしかいなくなったんじゃないの。ウーマン・リブなんて好きじゃないよ。��女″って言葉きいたら、ぼくはロマンとか夢を連想する。男として生まれたからは女を追いもとめて生きていきたいし、公演すると集団で、ぼくをみてくれているか

ら、こっちも客席の、客の目をみてやっている。ま、ぼくをみるのを楽しみに生きている人もいてくれると思うと、これはもうサービス、これつとめなきゃあと思うね。だから、ショーの場合はオーデコロンたっぷりふってお客に接するわけ。（匂いが）鼻の先に二日ぐらいは残っているだろうし、握手した客は次の時も来てくれるだろう。ところが、まったく一部に無茶な人がいるんだなあ、これが悲しいよ」

　その杉、正月の新歌舞伎座では「柳生二蓋笠」で初の剣豪ものに取り組む。

 

（写真）大阪のファンクラブの集いで女性に取り巻かれた杉良太郎