砂田文相は十一日、大阪市内で開かれた福田首相はじめ閣僚と関西財界首脳との懇談会の席上、関西財界から要望の強かった国立文楽劇場の設立について「五十三年度に大阪市天王寺区の高津小学校跡地の用地調査を行い、五十四年度に劇場の設計を終え、五十五年度には着工したい」と表明した。高津小学校跡地は候補地としてかねてから有力視されていたが、設計、着エの時期を明確に表明したのは初めてで、関係者は大きな前進と喜んでいる。

大阪が誇る伝統芸能の文楽は最近すたれる一方で、公演そのものも本場の大阪より東京の方が多い。大阪に後継者を育成するけいこ場のないことも主因の一つで、「けいこ場を備えた本格的な常設劇場を文楽発祥地の大阪に」は、浪速っ子の長い間の念願だった。

　このため財界が中心となって大阪府、大阪市とともに政府へ実現を働きかけ、五十一年度予算から建設準備調査費がつき、五十三年度予算案にも約千五百万円が計上された。しかし、場所、着工の見通しなど具休的な点ははっきりしなかった。

　建設場所は大阪市北区の阪大跡地、吹田市の万国博記念公園内と高津小学校跡地が検討されてきたが、繁華街に近く交通の便がよいという条件から高津小学校跡地が最も有力視されている。こんどの文相発言は政府が地元の実情を理解し、実現に本腰を上げたものと関係者は受けとめ「大阪文化振興のいとぐちに」と張り切っている。